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溶接に移行するなど軽量化対策が採られてきた。現在では高張力鋼の採用によりコストを上げずに軽量化されてきている。ボディー及び車台の軽量化を高張力銅の使用等で図ることは既に限界に近づいており、更なる軽量化を図るためにはアルミニウム合金及び有機材料の使用が必要となり、これら材料の溶接・接合技術の開発が不可避であることが述べられた。
高速鉄道車両の軽量化については鉄道技術総合研究所の高尾氏より現状分析がなされた。高速鉄道車両においては、軌道の建設費及び維持費の低減、地面の振動低減などの環境問題対策、及びエネルギー消費量の低減の3要素から軽量化が必要とされる。技術的には、ACモーター制御システムへの変更、各種装置のコンパクト化、ボギーの構造変化、ボディー断面の減少、強度メンバーの薄板化、アルミ合金あるいは複合材料の使用、などにより軽量化が図られている。従来の鋼製車両に比べて最近のアルミハニカムパネルを使用した車両では車体重量は1/5に軽減しているが、今後ともエネルギー消費低減のため軽量化技術の開発が必要であることが述べられた。
以上述べてきたように、船舶、自動車及び鉄道車両のいずれに於いてもアルミニウム合金の役割が大きい。住友軽金属の熊谷氏は軽量化のためのアルミニウム合金とその先端接合技術について講演を行った。我が国では、自動車用には主として5000系合金が使われているが、最近ペンキ乾燥時に強度が上がる6000軽合金の使用について関心が高まっている。一方船舶、鉄道車両には5000系及び6000系が使用され、特に6000系合金は主として押し出し成型部品に使われている。アルミニウム鋳造合金はポロシティが発生しやすく溶融溶接が困難であるが、最近真空ダイキャスト法が開発され溶接が可能になってきた。また真空ろう行法による大面積のアルミニウムハニカムパネルの製作が可能になり、新幹線へ適用されるようになった。溶接・接合技術については、新しいCu−Ag-O合金の開発によって抵抗スポット溶接の電極寿命が著しく伸びることが示された。自動車等に於いては銅とアルミ合金の接合が必要になるが、中間部材としてアルミクラッド鋼を間に挟んだ抵抗スポット溶接が効果的であることが紹介された。また新しいアーク溶接法として、(BGTAアーク電極ワイヤの直後からコールドワイヤを溶融池に送給するダブルワイヤGTA溶接法が紹介され、用着量の増大ばかりでなく溶融池の温度低下による変形減少の効果が示された。また、鋼のテーラードブランク溶接ではレーザ溶接又はマッシュシーム溶接が使われているが、アルミ合金ではこれらの溶接法適用に現状では問題点がある。そこで、高速GTA溶接が検討されており、7m/minの高速溶接が可能であることが紹介された。
最後にフランスのナント大学のMarya教授によりアルミニウム合金の突き合わせ溶接部の動荷重下における挙動解析が発表された。本研究の目的は、フランスの新幹線(TGV)の連結器部分に衝突時の衝撃を緩和するための一種のショックアブソーバーを開発し、その性能を確認することである。金属製アブソーバーは5754H111アルミ合金の四角形状溶接パイプで構成されており、溶接部の材料学的特性、アブソーバー強度のシミュレーション結果、静的強度及びクラッシュ強度の実機試験結果が報告され、本合金は優れた延性と溶接性によりエネルギー吸収性能に優れており、十分に実用化に耐えることが報告された。
以上のように、本特別セッションでは各種輸送体の高速化・軽量化に関する実用技術的な問題が扱われたため、聴衆の関心度も高く有意義なセッションであった。

 

セッション A−1

 

 

 

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